広く一般向けのキーワードとして、最近人生100年時代が到来。年金崩壊。なんて煽り文句がよく聞こえてきます。「煽り文句」と書いたのは、根拠資料と実績を重んじるモノづくり業界に身を置くものとして、どちらも「説得力がちょっと弱い」と感じているからです。
個人的に思うところを順にまとめます。
人生100年時代とは
まず、「人生100年」について、初めてこのワードが作られたのはイギリスにあるロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授が書いた「ライフ・シフト」という本の中で出てきたことを発端としています。
そして、その本の中での「100年」は、「過去200年の米国人平均寿命が、今後も同じように伸びた場合」であるとしています。
具体的には2007年生まれの米国人の50%は104歳まで生きる。日本人は107歳まで生きる。という予測です。
ちなみに、毎年発表される平均寿命データは、「その年に生まれた人間」を対象としており、今生活している大多数の人間は対象ではないことは有名ですね。
なので、少なくとも2000年代前後に生まれた人を対象としています。30代の私は微妙な位置ですが、今50代や60代の方を同様の根拠で語った場合、人生80年~90年あたりでしょう。
つまり、特に目新しい事ではないのです。割と昔から予想できたことを「目を引く言葉」に置きなおしているだけだと思っています。
ではなぜ、「目を引く言葉」で我々一般庶民を煽ってくるのでしょう。
これは「将来のお金」に関わることでかなり無理が来ていることの象徴であり、ある意味では「はっきり言えないけど結構ヤバい」ことが漏れ出てきたのかなと思ってます。
キーワードは「年金崩壊」、「社会保障崩壊」、「終身雇用崩壊」
年金崩壊
年金崩壊については、方々で言われているように現役世代が減って、受給世代が増えるという単純な構造的問題に始まるでしょう。つまり、2000年代前後以降に生まれた人は、これまでよりも重い負担を強いられてしまい、もらう頃には大幅に減額されるという現状認識から始まっています。
いまさら言うまでもない内容ですが、「人生100年」という、いかにも新しい言葉を使って、いままでとは違う時代なんだから仕方ないよね感を出そうとしているような気がしてます。
社会保障崩壊
次に社会保障崩壊についても、基本的には年金と同じ少子高齢化が原因の一つではありますが、少し闇が深い問題でもあります。ご存じの通り、ここ10年くらい「健康寿命」をテーマとした健康食品や健康法なんかが稼ぎを上げてるみたいです。
で、健康寿命を過ぎた今生きている方々はどうしているのでしょうか?寝たきりに近い状態から完全に植物状態まで平均して10年以上(平均寿命-健康寿命)過ごしています。この間、透析を始めとしてかかる医療費はものすごい金額になります。
一方で健康寿命以下の方々はどうでしょう。毎日病院で寄り合い状態があちこちで発生しています。たいしたことなくても、病院にかかれば保険料が支払われます。
この両面から攻められた社会保障費は国家予算の半分を持って行ってしまいます。というか、国家予算の半分近くが国債発行であり、国の収入に対して、社会保障がほとんど使つかっちゃってる状態です。
しかも、恐ろしいことに、高齢者人口に比例してどんどん増えてしまいます。
終身雇用崩壊
少子高齢化から少し離れます。どちらかというと産業界が悪乗りしている感もあるような気がします。
経団連会長であり日立製作所会長、トヨタ自動車の社長と「終身雇用の維持は無理っぽいよ。」と公表して話題になりました。
今の50代は定年まではぎりぎり逃げ切れるかもしれませんが、60代になった時の再雇用らくちん高収入は期待できないかもしれません。そういう意味では今の60代が逃げ切りになるのかな。
私含む30代はもう無理なんでしょう。こういう場合、最悪ケースを想定しないと後々慌てることになりますからね。
モノづくり企業で働くうえで、この空気感はなんとなくわかります。というか、いまさら感もあるのですが。。。
個人的な認識でいうと、約20年前の「世界の工場中国」、「モノづくり大国日本」が既に矛盾していると感じていました。どっちで作ってんの!?って感じです。
この頃は、モノづくりの自動化レベルも、中国の人件費も低く、単純作業は人件費が安い中国と、高度な技術が必要な作業は日本。又は、決まった工程で量産する中国と、工程を決めるマザー工場を持つ日本という位置づけで説明されていて、実際そのような配置になっていました。
さて、当時10代の私は無邪気にそれが合理的なんだと割と本気で信じていましたが、日本の高度経済成長の時と全く同じだったんですね。欧米と日本→日本と欧米にプレーヤーが入れ替わっただけ。
当時日本企業は圧倒的な高品質、低コストで欧米のモノづくり企業を蹴散らしてました。プラザ合意までは。。。
蹴散らされたこの20年で欧米企業はどうなったか。ご存じの通り、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)を筆頭にITが新しいプレーヤーとして世界の上位をほぼ独走状態です。今後伸びるとされるAI、IoT、VRなんかもその分野でありさらに加速するでしょう。
大事なことは、日本企業に蹴散らされて今だ生きている欧米企業はトッププレーヤーから降りました。で、大規模な業界再編を経たのちに、大体が安全保障と密接に関わっているので、国に守られています。金融、航空機、原子力、エネルギー関連が代表的でしょうか。
先進国、最先端を一時期走っちゃったせいで、無駄にプライドが高いだけで実はあまり稼げていないのが今の日本企業に見え隠れしてます。残念ながら古い会社ほど従業員レベルまでそうなってると思います。
では今、どうするか。実績がある方法は、もう一度欧米のトッププレーヤーを追いかける作戦です。でも先述のプライドが邪魔をする。現代では特許やIPなど制度的に縛るのもハードルになります。
つまり、「欧米を共に追いかける競合として中国がいる」のが日本の立ち位置として平均的なところかと感じます。モノによってはフッ化水素みたいな独占企業もありますが、あくまで全体的なモノづくりとしては。。
ここで本題に戻ります。先を走っているのは欧米IT企業です。同じ土俵に立つために制度設計に欧米式を取り入れようとした結果が、「終身雇用崩壊」です。これは経営判断の枷を外す行為でもあります。いいか悪いかは置いといて、人件費は固定費から変動費に移行できます。事業再編や事業売却、買収も難易度が下がります。
個人的に問題だと思うのは、欧米「IT」企業であることが問題なのです。構造的には巨大な工場も、多数の工員もいらない業界です。日立やトヨタがうらやむのも無理はないかと思います。
株主の目から見ても、簡単に増減できない従業員数は過大な資産とみられる可能性が高いです。
とはいえ、日本の企業は法律により簡単に従業員を放流できません。でも、家電業界、メガバンクをはじめとして、いきなり大規模リストラせざるを得ない可能性もあります。
であれば、リストラを決心するまでに間に、会社の余力は使っちゃってるから、常にそういった事態に備えておいてほしい。と思うのが素直な感覚かもしれません。
まとめ
つまるところ、平成30年間のツケが無視できなくなった。というところだと思います。
個人的には昭和末期・平成初期入社世代あたりは現状維持が精一杯だった残念な世代として認識してしまいます。バブル組の負の遺産をいきなり背負わされた苦労した世代なのかもしれませんが、がんばったからOKなんて成果主義を進めた世代は言わないですよね。
とはいえ、これが「人生100年」とかいう微妙に前向きな言葉に置き換えて独り歩きしているのではないでしょうか。
私には現状維持勢力の「降参の白旗」。又は「迫る危機への避難勧告」に見えます。
いま、責任者をつるし上げても、一時的に気分がいいかもしれませんが国民全体に保障させるなんて無理ですし、たぶん個人としての責任者なんかいないのでしょう。日本の村社会的な人事制度も日本文化みたいなものでしょう。足の引っ張り合いに関わりたくもないし、前向きにできることをしていくしかないな。という結論になりました。
うーん。将来予測としては根拠薄弱。しかも本音は別のところ。自分の妄想であることを望みながら日本の将来は中間層に優しくないな。というか優しくする余力がもうないんだな。と認識を新たにしたところです。
ということで、会社には期待せず、株式投資を初めてみたので、その経過なんかもシェアしていけたらと思います。
なぜ株式投資なのか、FXとか、インデックス投資とか、不動産投資とかいろいろある中、株式投資を選んだ理由については別記事でご紹介していきます。
コメント