第13章:会社の肩書きがなくなっても、食っていけるか?

副業

「この先、もし“課長”じゃなくなったとしても、俺は何者なんだろう」

ある夜、ふと湧いてきた疑問に、田中誠一は言葉を失った。

50歳が見え始めた今、会社での肩書きだけに頼った生き方は、危うい。

自分という人間を、もっと根っこの部分から確かめたい――そんな気持ちが高まっていた。


1. 「課長の田中」から「田中誠一」へ

これまで副業では、あくまで「会社員の延長線」で戦ってきた田中さん。

ブログでもX(旧Twitter)でも、本名も顔も出さず、“無難に”やっていた。

だが、ある読者から届いた一通のメッセージが彼を揺さぶった。

「あなたの言葉に救われました。もっと“あなた自身”の考えが知りたいです」

匿名の発信では限界がある。

“肩書きのない自分”が何を語れるか――試されている気がした。


2. 自分だけの「言語化資産」を育てる

ChatGPTを使って、田中さんは過去のブログ記事やSNSの投稿を分析した。

AIが示したキーワードは興味深かった。

  • 「40代管理職のリアル」
  • 「副業バレNGでもできる行動戦略」
  • 「感情に寄り添うマネジメント論」

「これは、俺にしか書けない“体験と言葉”だ」

“自分ブランド”とは、特別な才能ではない。

自分だけが歩いてきた「道のり」と「視点」を、わかりやすく言語化できるかどうか。

それに気づいた田中さんは、自分の発信スタイルを見直し始めた。


3. 信頼を積み上げる「メディアの分散」

「ブログだけじゃ足りない」

田中さんは、新たに無料のメールマガジンをスタートした。

読者との距離を縮め、もっと深く信頼を築く場所が欲しかった。

加えて、音声配信アプリで“副業マインドセットの小話”も始めた。

自分の声で伝えることで、より人間味が加わるのを実感した。

会社で築いた信頼は、「役職」が保証してくれる。

だが、副業では“人間そのもの”が評価対象になる。

それが怖さでもあり、面白さでもあった。


4. 会社の看板を外しても、通用するか?

そんな中、ある副業仲間からコラボの提案があった。

内容は、「40代管理職のための副業戦略セミナー」を共同開催するというもの。

田中さんは迷った。

「俺に“教える資格”なんてあるのか?」

だが、仲間が言った一言が背中を押した。

「今の田中さんって、“やりながら伝えてる人”じゃないですか。そのリアルさが価値なんですよ」

実際、セミナーでは、会社との距離感・家族との対話・時間捻出の工夫など、田中さんの“等身大の知見”が好評だった。

終わったあと、参加者の一人が握手を求めてこう言った。

「今日の話、本当に刺さりました。“田中さん”として、すごく尊敬します」

それは、役職でも勤務先でもなく、「田中誠一」という個人に向けられた賛辞だった。


5. 「働くこと」の意味が変わってきた

ある日、社内の打ち合わせで、部下から「最近、雰囲気が変わった」と言われた。

「前より、なんか“自分の意志で動いてる感”ありますね」

それはたぶん、副業で“自分の名前で責任を取る感覚”を得たからだ。

言葉の重み、人の信頼、時間の価値――それを体感したことで、田中さんのマネジメントにも変化が出ていた。

「副業って、“もう一つの仕事”じゃなくて、“もう一つの自分の人生”だったんだな」

そう思えたとき、会社の肩書きに頼らなくても、生きていける自信が芽生えた。


6. 「自分で稼ぐ」ことが、“自分を生きる”ことになる

今、田中さんの月間副業収入は会社の賞与とほぼ同じ額になった。

だが、それよりも価値があったのは、「働き方の主導権を自分が握っている」という実感だった。

  • 自分の強みを発信し
  • 仲間と協力しながら
  • 信頼を積み上げ
  • 無理なく続けることができる

会社の名前がなくても、自分の名前で誰かに価値を届けられる。

その確信が、これからの人生を支えてくれる。


次章予告:

第14章「“稼げるか”より、“誰とどう生きるか”を考える」――副業が変えた“人との向き合い方”

副業は「お金」の話から、「人生」の話へと進化する。

次章では、田中さんが“信頼”と“つながり”を見つめ直す物語が展開されます。

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